医療施設におけるコロナウイルス感染症対策と設計
設計デザインにおける対策は、医療施設内においての院内感染を防ぎ、患者様と医療従事者の安全を守ること、すなわち「感染経路」を断ち、感染症の拡大を未然に防ぐことに主眼をおいた取り組みです。
「感染経路」には「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3種類がありますので、順にそれぞれの対応策の事例をご紹介したいと思います。
① 接触感染
接触感染とは、皮膚や粘膜の直接的な接触や、手、ドアノブ、手摺、便座、スイッチ、ボタン等の表面を介しての接触で病原体が付着することによる感染のことです。
対応策
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医療施設の入口ドア
接触を避けるため、手を近づけるだけで検知する非接触スイッチを採用。 -
ドアハンドル
手動式のドアにおいてもウイルスや細菌を不活性化させる効果のある抗ウイルス樹脂を採用。 -
内装材
床材や壁紙など、抗菌効果の持続性の高いものや、付着したウイルスを不活性化させる作用のある素材を採用。 -
水栓金具
直接手で触れることのないよう、手洗いや流し台などには自動水栓を採用。 -
手洗い設備の増設
こまめに手を洗えるように待合付近や診察室裏など、患者様とスタッフ用の手洗い設備を増設。
② 飛沫感染
飛沫感染とは、会話や咳やくしゃみなどの細かい水滴(しぶき)を介して感受性のある人の気道の粘膜や、目の粘膜などから侵入することによって感染することを言います。
対応策
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受付カウンター
受付及び会計時などの飛沫感染を防止する為に、受付カウンターにアクリルパネルを設置。 -
隔離室
隔離待合や隔離診察・処置室の設置。 -
待合面積の広さ・什器の配置
患者さん同士の距離を十分に確保する為に、通常より待合の面積を広く確保し、一人用の椅子を配置。
③ 空気感染
空気感染とは、空気中に浮遊する飛沫核(エアロゾル)を吸い込ことで感染することを言います。
対応策
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各部屋の換気量UP
飛沫核(エアロゾル)に関しては、3時間以上浮遊する事ができ、換気ができない部屋だと同じ空間にいる人まで感染してしまう可能性があるとも言われていますので、必要に応じて各部屋の機械換気の量を上げる事が重要になります。
新型コロナウイルス感染症への人事労務対応
新型コロナウイルス感染症(COVID19)が流行している中、医院を運営していく中で人材は人財とも言える程、貴重な財産となります。では、従業員の方に安心して働いてもらえる為に医院として労働環境を整える必要があります。
それでは、どのような対策方法があるのでしょうか。
① 院内感染の防止(医院内のコロナ対策)
まず、感染症が流行している中で従業員の方が一番に気になるのは「ウイルス感染の不安」という点が出てきます。ご家族の中に小さいお子様や持病をお持ちの家族がいらっしゃる場合は尚更です。そういった点から接触感染、飛沫感染、空気感染を防ぐ設備を導入する必要があります。
② 濃厚接触者への対応
コロナウイルス感染症においては、感染者との濃厚接触をした場合でも従業員の方は出勤停止になります。そうなると従業員にとって出勤停止中の賃金を得ることが出来ず、経済的にも不安になります。この様なケースで取られている対応としては1.事務作業等に於いてはテレワーク(在宅勤務)可能な体制を整える。2.就業規則において病欠時の賃金保障を定めるといった方法があります。
③ 採用時・面接時
医院を開設するに当たり、従業員を募集しなければ始まりませんが、昨今、面接日程の連絡時において医院の感染症対策に関しての質問が増えております。また、面接に来院された方がウイルス保持者でないとも限りません。医院開業に関連する人すべての方の安全を守るためにも感染防止対策の導入が必要となります。
新型コロナウィルス感染症における検査
新型コロナウィルス感染症(COVID19)における検査がすべて保健所等の行政を介して行われていた状況から変化し、検査キット等が出来てきた現在では、医師の判断で検査を行うなど様々な状況での検査が想定されるようになってきています。
そこで、検査種類と各検査の意義を簡単にまとめてみました。
① 核酸検出検査:PCR検査
ウィルス遺伝子(核酸)を特異的に増幅するPCR法が用いられる。検体中に遺伝子が存在しているか否かを定性的に確認する方法として、簡便かつ短時間で結果判定ができる遺伝子検査方法のLAMP法と、これら定性的検査に対してウィルス遺伝子の定量が可能なリアルタイムPCR法がある。
- リアルタイムPCR法
定量法であることからウィルス量の比較や推移が評価できること、コピー数が推定できること等から信頼性が高い。 - LAMP法
一定温度で遺伝子を増幅するため、簡便な機器のみで実施でき、リアルタイムPCRと比較して感度は落ちるものの実用範囲で、反応時間が35分~50分程度と短いという利点がある。
② 抗原検査
SARS-CoV-2の構成成分である蛋白質を、ウィルスに特異的な抗体を用いて検出する検査方法である。PCR法と同様に陽性の場合はウィルスが検体中に存在することを示す。
抗原検査には、定性検査と定量検査がある。
抗原定性検査は、ウィルスの抗原を検知し、診断に導く検査であり、PCR検査とともに有症状者の確定診断として用いることができ、また、症状発症から2~9日目の症例では陰性の確定診断として用いることができる。定性検査は簡便・迅速であり、外来やベットサイドにおける有症状者のスクリーニング等に有用である。一方、抗原定量検査は、ウィルス抗原の量を測定することができ、特異度も高く、感度もLAMP法等の簡易な遺伝子検査方法と同レベルである。
③ 抗体検査
抗体検査はウィルスを検出する検査ではなく、ウィルスに対する抗体の有無を調べる検査である。陽性となる時期は症状出現後、1~3週間経ってから陽性となることが知られている。これはウィルスRNAが検出されなくなる時期と重なり、一般に感染歴の指標に使用される。従って抗体検査が陽性であっても、その時点で被検者からウィルスが排出されていることを意味するものでない。
COVID-19における検査については、現在、遺伝子検査、抗原検査が実施されている。いずれの検査でも病原体が検出された場合、検体採取時点における感染が確定される。ただし、ウィルス量が少ない例では検出感度以下(陰性)となることや、同一被検者でも経時的に排出ウィルス量が変化するため、適切なタイミングでの検査が求められる。各種検査法の検出感度や非特異反応を把握し、それぞれの検査法が持つ特徴を理解することが、適切な判定を行う上で重要である。