整形外科 医院開業のポイント
特徴と注意点
病院の整形外科は、リハビリに関してはPTやOTをおいてリハビリテーションの施設基準を算定している所がほとんどですが、診療所のリハビリの場合はスペースや人員配置(人件費)の関係からリハビリテーションの施設基準を算定するか又は物理療法だけにするのかの選択が出て来ます。
施設基準を算定した場合、PTやOTの人件費は一般職員より高額になりますが、その分リハビリから得られる診療報酬も高くなります。
又、より専門性の高い整形外科とのイメージも付くのではないでしょうか。
一方、物理療法だけの整形外科医院の場合、診療単価は低くなりますが、患者数を多くこなせるのと人件費が抑えられるというメリットがあります。場合によっては、地域老人の憩いの場になる可能性もあります。
立地は、市中の整形外科の場合、どうしても高齢患者さんが多くなりますので、ビル診なら1階部分が理想で、施設基準を算定する場合のリハビリ室は、最低でも45㎡は必要となります。
介護保険を使った通所リハを並行して実施すれば、診療所の収益拡大にもなりますので、是非一度検討してみてはいかがでしょう。
又、徒歩での通院が困難な患者さんも多いので、近隣の駐車場の確保も必要です。
必要面積と開業物件立地(選定)ポイント
物件立地について
立地選定は希望するエリアを絞り込み、物件の目星を付けて診療圏調査を行い、あらかじめ定めた診療コンセプトを考慮して選定をする。自院の強みを明確化することで、対象とする患者層や地域性が浮かび上がる。そして、事業シミュレーションをした上で十分に経営に成り立つ物件がどうか確認するのがいいでしょう。
必要面積
約50~70坪。施設基準によりリハビリ室は45㎡以上が必要。
ポイント
整形外科は歩行が困難な患者様が多いので、アクセスしやすい立地条件は重要です。車イスや松葉杖の患者様もいますから、エレベーターやバリアフリーは必須です。郊外の開業なら駐車場も確保できる場所がいいでしょう。また、整形外科は診療時間が短く、採算の関係上多くの診療を行う必要があるため、クリニックの認知度は重要事項です。人の往来の多い場所が好ましいでしょう。
おすすめ開業形態
戸建てクリニック
①土地を購入(または所有地)
②土地を借りる
③建て貸し(リースバック)
メリット
設計プランの自由度が高く希望に合ったクリニックを作ることができます。また、駐車場の台数も確保できる場合も多いので車を利用した来院患者の確保も見込むことができます。
デメリット
開業資金が多額となり、開業後の資金繰りも含めて資金調達を考える必要があります。また、開業までの期間が長く、時間や費用のロスがでることもあります。
ビル診療所
①スケルトン
②事務所仕様
③医療ビル
④医療モール
メリット
初期投資が比較的少なく開業資金に応じた計画を立てることができます。また、駅前など好立地物件や医療モールなど集患しやすい面もあります
デメリット
設計プランの自由度が低く、制約も多いことがあります。診療科目によってはクリニックに適さない場合や家賃の関係上、窮屈な設計になることもあります。医療機器の搬入や設置、空調設備、換気設備、給排水設備などの検討が必要となります。
第三者より承継したクリニック
メリット
施設の内装や医療機器など承継することにより初期投資がまったくの新規開業より少なくてすむ場合があります。そして、何より、患者を引き継げること、当初よりある程度の患者を確保できることが大きなメリットとなります。また、スタッフの継続雇用もメリットとなりうる材料にもなります。
デメリット
前院長の診療方針を無視してしまうと今まで通ってくれていた患者が離れてしまうことがありますので、自分らしい診療方針にとらわれることなく少しずつ変えていくことが必要となります。
また、既存の施設を利用する必要があるので改修や医療機器の入れ換えなどの制約が多いことが考えられます。
内装レイアウトのポイント
整形外科は診療メニューが多く、受付を経て直接リハビリ室に行く人、X線撮影検査に行く人、初診で診察室 へ行く人など、患者さんの動線が複雑になる為、受付・待合室からのアクセスが明確に分離した構成が望ましいのと、足やひざ、腰などに痛みを感じている患者さんのためにも、ほかの診療科以上に段差をなくし、通路や待合スペースに余裕を持たせ、車椅子や歩行補助器具などで来院される患者さんの利便性を考慮します。
又、リハビリ室においては、特掲診療科、運動リハビリテーションの適合医療機関にするためには、45㎡以上の機能訓練室(リハビリ室)が最低認可条件となっていますので注意が必要です。
広告活用について
立地条件などを考慮した上で診療圏を設定し、地域密着型の広告媒体を選択すると効果的です。また、スポーツ外来などの特殊外来を標榜している場合には比較的若い年代がターゲットとなるため、ホームページが効果的でしょう。
高齢者が主なターゲットになりますので、高齢者の生活行動を把握し、生活行動パターンを捉えた広告展開をしましょう。
適正な人員配置
受付、看護師、リハビリ助手、理学療法士(PT)、診療放射線技師
整形外科は他の診療科目に比べてリハビリ部門の人員配置が必要になります。
リハビリ助手は受付と兼務されているケースもあります。
理学療法士は採用が難しく、人件費的にも高止まりするため慎重に検討する必要があります。
また、診療放射線技師を採用できると院長先生の負担が減ります。
資金計画
内科をベースにして、各診療科目ごとに資金計画を比較します。
テナント保証金:交渉が可能な場合もありますが、10カ月分が基本となります。
広告宣伝費:ホームページ作成料や、看板等、内装サイン工事の費用になります。
什器・備品:待合の椅子や、診察室の机等の費用となります。
医師会入会金:地域によって違いますが、300万円~500万円のレンジが多くなっております。
開業コンサルタント:金額やお願いできる業務内容はピンキリです。数百万という会社もあります。
運転資金:事業が軌道に乗るまでの固定費(家賃や人件費等)の支払いに充てる資金です。多く確保できると安心です。
基本的には使途が限定されていない運転資金は借りにくいのですが、最近は多く借りることが可能となっております。
内装工事(60坪) | 3,600万円 |
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医療機器 | 2,500万円 |
テナント保証金 | 600万円 |
広告宣伝費 | 300万円 |
什器・備品 | 400万円 |
医師会入会金 | 400万円 |
開業コンサルタント | 100万円 |
薬剤費 | 50万円 |
運転資金 | 2,000万円 |
開業前経費、予備費 | 100万円 |
合計 | 10,050万円 |
リハビリのスペースが必要となるので、坪数を広く確保する必要があります。医療機器は内科に比べると多くかかります。
コメディカルの採用に伴い人件費が多くかかるので、運転資金を多く確保する必要があります。
損益分岐点
●設定条件●
固定費は、統計データ固定費−専従者給与で設定
借入5,000万円、15年元利均等返済、金利0.1%、据え置きなし→毎月返済額 約28万円
借入7,500万円、15年元利均等返済、金利0.2%、据え置きなし→毎月返済額 約42万円
生活費70万円
固定費(月) | 粗利益率 | 単価 | 日数 |
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4,717,000 | 84.7% | 2,500 | 20 |
固定費+返済 +生活費 |
必要収入額 | 必要患者数(人) | 粗利率 | 単価 | 日数 | |
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月 | 日 | |||||
5,697,000 | 6,726,092 | 2,242 | 112 | 84.7% | 3,000 | 20 |
固定費+返済 +生活費 |
必要収入額 | 必要患者数(人) | 粗利率 | 単価 | 日数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
月 | 日 | |||||
5,837,000 | 6,891,381 | 2,297 | 115 | 84.7% | 3,000 | 20 |